#197 バッハ 前奏曲 cis-moll BWV849(1)

美しい平均律のプレリュードを3回に分けて学ぶ第1回目は13小節まで見てみましょう。 ゆっくりのテンポで歌いながら揺れる子守唄のようなリズムを守りながら弾く曲です。 両手の声部の8分音符の旋律を交互に歌うイメージで。クレッシェンドは単に段々音量を大きくするのではなく気持ちの盛り上がりと捉えて音に向かって行くことを意識しましょう。 時には細かいタイミング(緑で表示)を自由に取って音を伸ばして弾いたり旋律を柔らかく。 旋律を膨らませて山を作りますがそれぞれの山の大きさの違いを+と-ではっきり意識して。 山の関係を考えて表現に繋げれば曲の構成や輪郭が分かりやすく更に旋律的になります。 フォルテやピアノなど単独の強弱記号よりも前後の強弱の関係を考えることが基本です。 アルペジオも歌って粘土をこねるような指先、鍵盤を引っ張る動きで旋律を歌いましょう。 6拍子より2拍子で考えて揺れるリズムを感じながらテンポを引きずらない事がネックです。 ペダルや強弱を忘れてリズムに集中するのも、歌う事に集中するのも其々良い練習です。 組み合わせた時には綺麗に歌いたい箇所もリズムが自由になり過ぎないようテンポを意識した良いバランスを探しましょう。次は装飾音、アルペジオ、トリルなども細かく見ます。 装飾音はいつもセンスよく長さや入れ方、タイミング、どの音を採用するか考えましょう。 例えば前打音は一音だけ前に弾くか、アルペジオ風にバラして弾くか、2音同時に弾いて不協和音を強調するか、色々な可能性を試して見ることで自分にとっての奏法が決まります。 装飾音を強調したり逆にあえて何も付けずに弾く選択もあるので吟味しながら進みます。 4段目のアルトの美しい旋律を強調するために手の方向は「10時」に向かって弾きます。 揺れるリズムの中に「小さな祈り」のような親密な空気が流れるように弾いてみましょう。

続きを見る »

#196 バッハ=ケンプ編 コラール前奏曲

バッハの美しいコラールをピアニスト、ケンプがピアノ用に編曲した作品です。 コラールは元は歌や楽器から成るひとつの音楽のジャンルですが、バッハはこれをオルガンのために手直ししました。原曲の歌詞から雰囲気を掴んで下さい。 オルガンの響きをイメージして弾けると良いです。メロディーは歌って、バスを響かせ、内声のハーモニーは小さく、3声を良いバランスで弾くことが大切です。 テンポはゆっくり、ソプラノは歌ってバスはオルガンの響きをイメージします。 3声のバランスを変えながら止まらずループ練習でちょうど良い響きを求めます。 右手は旋律を弾く外側の指は勢いよく、ハーモニーを受け持つ内側は柔らかく。 2声を異なるタッチで弾き分けます。内声の旋律が聴こえたら意識して歌います。 cresc.-dec.も効果的に表します。フレーズ2回目はエコーの様にpで悲しく。 トリルも丁寧にdec.します。小さいトリルは内声の旋律とタイミングずらして。 バスはオルガンの響きを出す為に時にはオクターブ下で弾くことも可能です。 強弱やバランス、タイミングを自由に表現しながら、神様に呼びかける、または祈る気持ちを持って宗教的な香りの豊かな音楽に仕上げましょう。

続きを見る »

#195 シューマン 森の情景「別れ」(3)

まず前回に引き続き最後のページの内声を見てみましょう。 曲の最後は森を後にして消えて行く…シューマンらしいファンタジーです。 3段目は表現を強く、テンポを上げて→戻し、クレッシェンドします。 ここも内声に出てくるテーマを強過ぎない範囲で強調しますが、練習の段階ではそれぞれの声部を弾き分けるために少し誇張した強弱で意識するのも良いです。 隠れた声部を探しながら美しく立体的な音のバランスを作りましょう。 時には強弱だけに頼らずタイミングを工夫し溜めて2:3もロマン派らしく曖昧に。 バスをドラマチックに弾きたい時はオクターブで。三連符は硬くならないように自然に1拍目をゆったり感じて馬車のリズムに動きに身を委ねましょう。 最後は和音の中に隠れるメロディのbーc音、バスのg♭やd-e-fなどを引き出して。 森との別れの悲しみだけでなく劇的な感情や不思議な情景の描写も聴こえます。 シューマンが馬車に乗って去って行くのを森が眺めている…など色々イメージしながら気持ちを込めて表現しましょう。

続きを見る »

#194 シューマン 森の情景「別れ」(2)

全9曲から成る森の情景から、最後の曲「別れ」を学ぶ2回目です。 3段目の2小節はイントロと同じですが前と異なるg-mollの和音が緊張感を生んで 不思議な森の情景を描写しています。シューマンらしい和声の変化を細かい強弱やタイミング、アーティキュレーション等使って積極的に表し魅力を伝えます。 小さな動機を鳥の鳴き声、シャープな動きとイメージして鋭い音で表現して。 柔らかく戻すためにはアルペジオ自由に。5段目は左和音連打のタイミングが鍵。 2:3のリズムは「ミタフカ(チョーフ=2/ミタカ=3の複合形)」で調子を取って。 右手2声部はレガートになる指使いでスライドするように一つの動きで。 fやpといった強弱記号より(+)(-)で前の部分との比較で強弱を感じると自然です。 ritだからゆっくりしようとせずに自然に音楽を感じることが大切です。 2pの二段目は雰囲気が変ります。内声もソプラノも左右を自由に使い旋律的に。 バスの変化もよく聴いて複雑な展開を耳で理解しましょう。 2段目までの不思議さが3段目は激しさ→すぐに美しさに変わります。 複雑な音楽ですが自分からあれこれ考え表現するのがシューマンの楽しさです。

続きを見る »