色々の疑問や不満 この記事には16世紀の宗教音楽を見てみましょう。 ルネサンス期にはキリスト教に対する疑問や不満が段々増えました。 ヒューマニズム(人文主義)の影響で神様ではなく、人間がもっと中心になりました。(音楽史8⇒) カトリック教会の様々なルールや不公平な行動(金銭)に対して反対の動きが始まりました。 大きな問題なのはカトリック教会の組織です。 キリスト教の組織が中世から大きくなって、とても裕福になりました。カトリック教会の偉い人たちが大きな豪邸に住んで、一般の人からお金を取ってリッチな生活をしていました。 元々キリスト教の教え(聖書)を守らないで生きていました。 悪く言いますと、組織やその中の人は汚くなりました。 現在も様々の組織で同じ問題がありますね・・・ マルティン・ルター(Martin Luther 1483年- 1546年) ドイツのルターの宗教改革が大きな波を起こしました。 マルティン・ルターは1517年に『95ヶ条の論題』をヴィッテンベルクの教会に掲出しました。 簡単に言いますと、彼はローマ教会に対して不満なところや改善してほしいことを紙に書いて町の教会の扉に張りました。 ルターは新しい「新教」を作る予定がなかったが、この95ヶ条の論題がすぐにヨーロッパ中に広がって大きく影響を与えました。 すぐに広がった理由は以前の記事に話した新しい印刷の技術です。 ルターの95ヶ条の論題がすぐ出版されてドイツに配布されました。 この動きの結果、ローマ・カトリック教会から分離しプロテスタント教会「新教」が出来ました。 プロテスタントの言葉はプロテストの動詞から由来します。 異議・反抗する行為という意味です。 トレントの宗教会議 プロテスタントの新教が段々ヨーロッパ中に広がりましたので、ローマのカトリック教会がとても困りました! このまま続くと自分たちの信者の数が減りますから何かしないと!カトリック教会の上の人たちが集まって「宗教会議」をしました。 これはトレントの宗教会議(1545年~1563年)と言います。トレントは北イタリアの町です。彼らは18年間をかけて話し合って討論しました。最後にカトリック教会の色々の改選する点が決めました。 対抗宗教改革 しかし、もう1つの結果はプロテスタントの動きを止めなければならないことです。カトリック教会はプロテスタントに強く対立をすることになりました。 これは「対抗宗教改革」といいます。 結局にプロテスタント対カトリックのケンカや戦争や魔女狩りが始まりました。17世紀に多くの宗教戦争がありました。 例えば、1つは「三十年戦争」1618年から1648年のドイツの地域の戦争でした。この30年間でドイツの地域の人口の30~60%が戦争で死亡しました。 音楽のアピール トレントの宗教会議の18年間に特に宗教的なことやミサの内容など・・色んな難しい話しをしていましたが・・ 彼らは音楽についても少し討論しました。 プロテスタントに負けない為カトリック教会のアピールを高める必要だという結果が出ました。 教会音楽は前より美しく、より分かりやすく、もっと純粋に作曲してほしい結論がでました。 ルネサンスの中期までの音楽は難しすぎと思われました。 分かりにくいポリフォニーやをやめて欲しかったです。 不自然なリズムをやめて、一般の人がすぐ楽しめてすぐ理解できる音楽を作って欲しい希望がありました。 光輝く美しく感じる音楽で多くの人が教会へ引っ張りたい目標がありました。 パレストリーナ(1525年~1594年) これに答えて、ルネサンスの一番美しい音楽を作る人が出てきました。 ジョヴァンニ・ピエロルイージ・ダ・パレストリーナ(1525年~1594年)イタリア人です。 パレストリーナはJ.S.バッハの前の一番偉大な作曲家と言われています。 今でも作曲を勉強している学生がパレストリーナの美しい幻のポリフォニー(多声音楽)を必ず勉強します! パレストリーナの特徴はポリフォニーの曲なのに、言葉や言葉の意味がよく聞き取れて言葉の意味は分かりやすいです。 分かりやすい音楽はトレントの宗教会議で求められたことでしたね! もう一つのポイントは純粋と美しい音楽を作って欲しいことでした。 パレストリーナの音楽を聴きますと半音や難しい不協和音はとても少ないです。 とてもやさしい音楽です。癒しの効果もあります。 天国や天使をイメージできる美しい世界です。長い時間を続けて聴ける音楽です。 これから、ルターのプロテスタント音楽とパレストリーナのカトリック音楽をもう少し詳しく見てみましょう。 ルターと音楽の役割 ルターは神学者、作家、聖職者と・・作曲でした。色んな才能がある人だったので、天才と言われています。 ルターにとって音楽とその役割はとても大事でした。実は、ルターはジョスカン・デ・プレの大ファンでした!(音楽史9⇒) ルターにとって音楽の役割は神様のメッセージを伝える事、人と人を繋げること(全員で歌う)と人を教育することです。 これはルネサンスらしい考え方です。音楽史8に古典ギリシャの影響を話しましたね。(音楽史8⇒) ところで・・・プロテスタントの新教に色々の「教派」が出来ました。ドイツにはルター派がありますが、オランダやスイスにはカルヴァン派です。カルヴァンは逆に音楽を悪く思っていました。彼は教会中で音楽を禁じていました。毎日に聖書を読んで、素朴とシンプルと真面目に生きることを大事する教派です。そのためにオランダの多くの教会にあったオルガンや彫刻や絵の全部が壊されました。 「聖画破壊の嵐」と言います。文化革命のようなことでした。 しかし、ルター教の教会では音楽がとても中心でした!これはドイツの地域に音楽が盛んになった大きな理由です。 ルターが作曲した歌(コラール旋律・讃美歌)を聴きましょう。1つのメロディとドイツ語の歌詞です。 メロディを全員で一緒に歌うのは大事なポイントです。カトリック教会では一般的に合唱団や神父さんが歌うが、ルターのこだわりは全員で歌うことです。そして、歌詞はカトリック教会のラテン語ではなく、ドイツ語です。 コラール ルター教はドイツの地域に段々広がりました。(当時にはドイツという国がまだなかった。ドイツは1867年頃に出来た国です) みんなが一緒に歌いたいから、ドイツ歌詞付き新しい歌曲が多く要求されていました。 メロディ:作曲家たちが自分で新しいメロディを作ったり、古い民謡を使ったり、カトリック教会のグレゴリオ聖歌を使ったりたくさんのコラールを作曲しました。 歌詞:歌詞も自分でか書いたり、古い歌や聖書からの文書などを使ったりしていました。コラールの歌詞をドイツ語で歌いました。 コラール(Choral)は、もともと全員によって歌われるための1声の賛美歌でした。この旋律は「コラール旋律」と言います。 しかし、ずっと1声のコラール旋律を歌うのはあんまり楽しくないですね。 ルターは1524年に自分が書いたコラール旋律に3声の伴奏を付けて4人で歌える曲を作りたいと思っていました。 ルターはその編曲を作曲家に依頼しました。4声のコラールはヨハン・ワルターが作曲しました。 彼はルターのコラール旋律をそのまま使って、別に3つの声部を付けました。 ヨハン・ワルターが先ほどのルターの旋律を編曲したコラールを聴きましょう。 これからドイツではコラールはとても大事なジャンルになります。コラールはドイツの音楽の土台と言われています。バッハの受難曲やカンタータやオルガンの曲にもコラールがよく出ます。 コラールの作り方は少し複雑ですので、これからのコラールの作り方を少し見てみましょう。 ★ 16世紀に人気がある愛の歌がありました。ハンス・レーオ・ハスラー「わが心は千々に乱れ 」Mein G'müt ist mir verwirret ★ 50年あとにある作曲家がそのメロディを使って4声のコラールを作ります。ヨハン・クリューガー (1656年) その時に曲のリズムを教会向けにシンプルな動きに変えます。元々の歌詞は愛の歌ですから使えないですね。 13世紀の修道士が書いた文章をパウル・ゲルハルトとう神学者がドイツ語に訳していました。 ヨハン・クリューガーがこの文章を使って曲の歌詞として使います。 ★ 70年後にバッハがこのコラールをまた編曲して自分の曲の中に使います。 1727年マタイ受難曲や1734年のクリスマス・オラトリオ ということ・・バッハのコラールは5人のコラボレーションですね。 ①ハスラーのメロディ②クリューガーのコラール③修道士の文書④ゲルハルトのドイツ語訳⑤バッハの編曲 私は3曲をつなげてビデオを作りました。 00分00秒 ハンス・レーオ・ハスラー「わが心は千々に乱れ 」Mein G'müt ist mir verwirret 03分00秒 ヨハン・クリューガー O Haupt voll Blut und Wunden 07分28秒 バッハ マタイ受難曲 ジョヴァンニ・ピエロルイージ・ダ・パレストリーナ ジョヴァンニ・ピエロルイージ・ダ・パレストリーナ(1525年~1594年)はカトリックの「教会音楽の父」ともいわれる。 彼の音楽を聴くとルネサンスの多くの作曲家たちの中で一番身を近く感じる音楽です。 私たちが慣れているクラシック音楽に近い音楽です。 パレストリーナの特徴は美しくて透明感があるポリフォニーです。そして、歌われる言葉は聞き取りやすいです。 激しい不協和音も少なく優しい音楽です。 パレストリーナから1つのミサ曲よりのアニュス・デイ (Agnus Dei) を聴きましょう。 6声の曲ですが、声部のバランスや透明感は素晴らしいです。 プロテスタント音楽とカトリック音楽の違いが聞こえますか? カトリック音楽はもう少し幻想的でロマンティックですね。 昔はピアノレッスンで音色は美しくないときや表現足りないときに 先生に言われたのは「プロテスタントのように弾かないで・・もっとカトリックらしく弾きましょう!」 もう少し勉強をしたい 以前の奏法ビデオを見てみましょう。 曲:J.S.バッハ コラール O,Haupt voll Blut und Wunden「血しおしたたる」 https://www.pianonet.jp/2020/05/03/os_harmony1/