バロック美術を勉強しますと2か所が中心になります。 南ヨーロッパ(イタリアとスペイン)と 北ヨーロッパ(ベルギーとオランダ)です。 この記事には北ヨーロッパのベルギーとオランダの美術を見てみましょう。 ベルギー フランドル 中世とルネサンスの音楽史の記事にフランドルという言葉が何度も出てきましたね。 当時のフランドルは現在のベルギーや北フランスと南オランダの地域でした。 現在のフランドルはと言いますとオランダ語圏の北ベルギーのことです。 チョコレートやワッフルやポテトフライの生まれ場所として有名です。 美術や文化は素晴らしくて、フランドルは「北のイタリア」と言われています。 フランドル地方がヨーロッパの音楽や美術に大きな影響を与えました。 🔗「音楽史7 ルネサンス 初期」 ちょっとしたの復習 (🔗=リンク先です。クリックしますとページを移動します) フランドル地方&ブルゴーニュ公国とフランドルの美術(ヤン・ファン・エイク) 🔗「音楽史7 ルネサンス 初期」 フランドル楽派、ルネサンス音楽の初期 ★ 第1世代:デュファイ(ベルギー1400年頃 – 1474年) フォーブルドンの和声の進行は美しいです。ミサ曲 「ロム・アルメ」武装した人。ブルゴーニュ公国やフランドル楽派 🔗「音楽史7 ルネサンス 初期」 フランドル楽派、ルネサンス音楽の中期 ★ 第2世代:デュファイの弟子:ヨハネス・オケゲム(ベルギー1420年~1497年) 北と南のスタイルを合わせた美しいミサ曲。 🔗「音楽史9 ルネサンス中期」 ★ 第3世代:オケゲムの弟子:ジョスカン・デ・プレ(ベルギー1455年頃~1521年) 中期の代表。美しい旋律と透明感があるモテット。4声のモテト《アヴェ・マリア》、シャンソン「千々の悲しみ」 🔗「音楽史9 ルネサンス中期」 フランドル楽派、ルネサンス音楽の後期 ★ 第4世代:アドリアン・ヴィラールト( ベルギー1490年~1562年) 🔗「音楽史10 ルネサンス後期-世俗音楽」 ★ 第5世代:オルランド・ディ・ラッソ( ベルギー1532年~1594年) 🔗「音楽史10 ルネサンス後期-世俗音楽」 ピーテル・パウル・ルーベンス (Peter Paul Rubens 1577年 - 1640年) ルーベンスは、バロック期のベルギーを代表する画家です。 多くの人にとって、ルーベンスと言えば『フランダースの犬』を思い出します。 イギリスの作家ウィーダが19世紀に書いた児童文学は1975年に日本でアニメーション化されました。 主人公のネロが見たがっていたアントウェルペン大聖堂(アントワープ)の絵画である『キリスト昇架』と『キリスト降架』の作者はルーベンスで、ネロが祈りを捧げていたアントウェルペン大聖堂のマリアも、ルーベンスが描いた『聖母被昇天』です。 私自身アントウェルペン大聖堂に行って作品を見ました。美術館と違って、静かで人がいないところです。ゆっくりに美しい作品を楽しめらられる場所です。 ジャンル フランドルのバロック美術をいくつかのジャンルに分けられます: 祭壇画 祭壇画(さいだんが)またはアルターピース(altarpiece)は、教会の祭壇飾りのことです。 宗教的題材を描いた絵を、教会の祭壇背後の枠の中に取り付けます。 祭壇画はいくつかの分かれたパネル(板絵)から作られています。 先ほどのルーベンスの『キリスト昇架』や『キリスト降架』は両方祭壇画です。 ルーベンス『キリスト昇架』 (1610年) 歴史画、神話画 ルーベンスは9年間イタリアに住んでイタリアのスタイル(カラヴァッジョ)を勉強しました。その影響でルーベンスの作品にイタリアと同じにクラシック(ギリシャ古代)やキリスト教のテーマ(宗教的題材)の作品が多いです。 ルーベンスの弟子アンソニー・ヴァン・ダイクの作品に歴史画も多いです。彼の一つの作品を見ましょう。 アンソニー・ヴァン・ダイク(Antoon van Dyck 1599年 - 1641年、フランドル出身) 『サムソンとデリラ』(1630年頃) サムソンは旧約聖書に登場する人物。古代イスラエルの士師の1人で、怪力の持ち主として有名。とても強い男でした。 彼の愛人はデリラです。彼女はサムソンの敵からお金をもらっている女性で、敵がサムソンを捕まえる為にデリラに彼の力の秘密を聞きだすように指示しますが、サムソンは秘密を教えません。彼女が彼をロープで縛ることが出来れば秘密を教えて上げるっとサムソンが冗談を言います。デリラはサムソンが寝ている間にロープをかけようとしますが、サムソンが起きてロープを壊します。しかし、最終的に彼は彼女に秘密を教えます:その秘密は「髪を切っていないから神様から特別の力をもらった」ということでした。そして、デリラがサムソンが寝ている間に彼の毛を切ります。そしてサムソンが力を失って敵に捕まってしまった。敵がサムソンの目をナイフで抜いて彼を奴隷にしますが、働いている間に彼の毛がまた生えてきます。サムソンが神様に祈ってまた前の力が戻ります。最後にサムソンが敵の寺院を壊して自分と敵、みんなが死にます。 庶民の生活や風刺画 一般の人の生活や面白くてちょっと笑えるシーン(漫画の元)が描かれている絵画のジャンルはベルギーとオランダに人気がありました。 プロテスタント教の影響で社会主義ようなテーマ(農民や労働者の辛い生活)を持った作品も北ヨーロッパに多いです。 ピーテル・ブリューゲル (子)(Pieter Brueghel The Younger 1564年 - 1636年)The Village Lawyer or The Tax Collector's Office ピーテル・ブリューゲル (子)はピーテル・ブリューゲル(父)の子供ですです。 ピーテル・ブリューゲル(父)はあの有名のルネサンスの画家です。 ルネサンスの美術になりますが・・ブリューゲル(父)の作品は以下です。右に絵はあの有名の「バベルの塔 」の絵画です。 静物画 静物画はフランドルやオランダの美術の中の人気があるジャンルです。静物画は静止した・・・ 自然物:花、頭蓋骨、狩りの獲物、貝殻、野菜、果物、台所の魚など・・や 人工物 :ガラス盃、陶磁器、パン、料理、楽器、パイプ、本など・・を対象とします。 これらを描く画家は、対象物を自らの美的感性に基づいて自由に配列し、画面を構成している。 ピーテル・クラース(Pieter Claesz, 1597年 - 1660年)『七面鳥のパイのある静物』(1627年) ヴァニタス 静物画のジャンルの中に「ヴァニタス」のテーマがあります。 バロック時代のフランドルやオランダなどヨーロッパ北部で特に多く描かれたスタイルの絵画は「ヴァニタス」です。 ヴァニタスとは人生の無意味のことや命の短さ、人生の空しさなどを表す静物画です。 人間の喜びや楽しみは全て無意味のことを表します。 人生の意味がない暗い気持ちを表す芸術です。 そのメッセージを伝えるためにヴァニタスの絵画に色々のシンボルを使います。 死を表す物は:頭蓋骨、腐った果物・花、潰れた本、鏡など 人生の短さ:時計や砂時計やパイプ(人生は煙のようにすぐに消えます)や消えたキャンドルなど 人生の空しさや喜びの無意味:置いてある楽器、割れたワイングラス、レモンの皮など ピーテル・クラース(Pieter Claesz, 1597年 - 1660年)Vanitas with Violin and Glass Ball アレゴリー 芸術ではこの抽象的なこと(死・人生・道徳)を具体化する(頭蓋骨・パイプ)表現の技法はアレゴリーと言います。 古代ギリシャからの表現です。 今ではアレゴリーのことを一番イメージしやすいのはタロットカードです。 タロットカードの絵柄に見られるシンボリックなアイテムや宗教絵画などに登場するモチーフがアレゴリーと言います。 オランダ オランダ黄金時代 オランダの17世紀ごろは「オランダ黄金時代」と呼びます。 そのときに貿易(日蘭:長崎の出島)、科学、軍事、オランダ芸術が最も進んだ期間でした。 他国の美術と比較すると今まで見たの派手な表現と豪華な芸術より・・ オランダの美術の方がもっと現実的(リアリズム)で表現が細かいです。 派手な表現より落ち着いた素朴な雰囲気を出している作品が方が多いです。 カトリックの南ヨーロッパと違ってドラマチックな作品が少ないです。 キリスト教のテーマもありますが、その上に田園的な風景や一般の人の肖像画や室内画が多いです。 オランダ美術のいくつかのジャンルを見てみましょう。 風景画 オランダは海抜より低くて山が全くありませんので、地平線がいつもよく見えて真平な国です。 多くの分厚い雲が低く浮かんでいます。曇った日が多いので雲と雲の間からわずかな光が国を照らしてくれます。 他の国にない独特な光や色の風景が見えます。 ヤーコプ・ファン・ロイスダール ★ 1620年から田園な風景の絵画がオランダに流行ります。 牧草地に牛、風車、運河、漁船と遠くに小さな教会の塔の絵画はオランダ風景画らしいです。 この時期の代表画家は ヤン・ファン・ホーイェン(Jan van Goyen、1596年-1656年) 彼の絵画は柔らかくて少しぼかした輪郭と美しい空や雲の絵画が多いです。 ★ 1650年から光と影の強いコントラストや深い色彩が流行します。 この時期の代表画家は ヤーコプ・ファン・ロイスダール(Jacob van Ruisdael, 1628年 - 1682年) 「ワイク・バイ・ドゥールステーデの風車」1670年 牛 風景画の表に牛や動物が写っている絵画も一つのサブジャンルです。代表する画家は アルベルト・カウプ(Aelbert Cuyp, 1620年 - 1691年)左の絵・・パウルス・ポッテル(Paulus Potter, 1625年 - 1654年)右の絵 海、冬 海外貿易と軍事の影響で海や船の絵画も多いです。代表する画家はシモン・デ・フリーヘル Simon de Vlieger (1601–1653)左の絵 冬の風景の絵画も人気があるジャンルです。代表する画家はヘンドリック・アーフェルカンプ Hendrick Avercamp (1585–1634)右の絵 肖像画 フランス・ハルス(Frans Hals, 1581年 - 1666年) フランス・ハルスは、オランダ絵画の黄金時代を代表する画家の1人です。 町の人々を描いた肖像画が多いです。ポートレート絵画、職人、役人、音楽家など多くの人物を描きました。 人々の生き生きとした表情を上手く伝える力がある画家です。 笑っている人物画を多く描いたことから「笑いの画家」と呼ばれている。 代表作の『陽気な酒飲み』(1628年)、リュートを弾く道化師(1623年)、微笑む騎士 (1624年)は、 モデルの人柄まで伝わってくるような名作である。 レンブラントの絵と似ていますが、ハルスは昼の光や銀色の光がお好みでした。 レンブラントの絵画には金色の光をよく見ます。レンブラントについてまた後で。 室内画 ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer 1632年 - 1675年) 室内画のジャンルはオランダ美術らしいジャンルです。 一般の人の家の中のシーンや瞬間が描かれている絵が多いです。 このジャンルの達人は世界で有名な画家ヨハネス・フェルメールです。 お手伝いさんがミルクを注いえでいる瞬間、遠くに行っている夫から手紙をもらっている妻の瞬間 シンプルなシーンですが、美しい絵画になっています。 『真珠の耳飾りの少女』1665年(左) 『牛乳を注ぐ女』1658年(右) 『音楽の稽古』1662年 (左) 『婦人と召使』(女主人と女中)1666年(右) レンブラント・ファン・レイン(Rembrandt van Rijn 1606年 - 1669年) ウィキペディア:レンブラントは、同じオランダのフェルメール、イタリアのカラヴァッジョ、フランドルのルーベンス、スペインのベラスケスなどと共に、バロック絵画を代表する画家の一人である。また、ヨーロッパ美術史における重要人物の一人である。 「光の画家」「光の魔術師」(または「光と影の画家」「光と影の魔術師」)の異名を持ち、油彩だけでなくエッチングや複合技法による銅版画やデッサンでも多くの作品を残した。絵画『夜警』はレンブラントの代表作として著名である。また、生涯を通じて自画像を描いたことでも知られ、これらはその時々の彼の内面までも伝えている。 『夜警』1642年 レンブラントの自画像は印象的です・・・ 『テュルプ博士の解剖学講義』1632年(左) 『ユダヤの花嫁(イサクとリベカ)』1667年(右) 『額縁の中の少女』1641年(左) 妻サスキア・ファン・オイレンブルフの肖像画 1634年(右) これで美術の記事を終わりして、次回は音楽史を見てみましょう!