これからの2つの記事にバロックを代表する何人かの芸術家を紹介したいと思います。 1つ目の記事には南ヨーロッパのイタリアとスペインを見てみましょう。 イタリア 前の記事にも話しましたが、イタリアのバロックスタイルの特徴がいくつかあります。 ★ ドラマチックで強い感情表現のスタイル ★ 豊かで深い色彩の絵画 ★ 光と影の強いコントラスト(明暗法、キアロスクーロ、テネブリズム) ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ ( Michelangelo Merisi da Caravaggio、1571年~1610年) やっぱり、バロック美術と言えば・・イタリアのカラヴァッジョです。 彼の作品はとてもバロックらしさを表しています。 カラヴァッジョの絵画の特徴がいくつかあります: ★ クラシック(古代ギリシャ)やキリスト教のテーマや人物の絵画が多いです。 ★ この昔の人物がバロック時代の格好・衣装を着ています。 ★ 場面もバロック当時の家や教会や町になっています。 このように大昔の人物が身近くに感じられるようになりました。 音楽史13の記事に「カトリック改革」について書きましたね。 トリエント公会議でカトリック教をもっとアピールしてもっと魅力的に見せることが決められました。 カラヴァッジョの絵画がそれに答えています。聖書の様々な話や人物が分かり易く魅力的に描かれています。 カラヴァッジョ「聖マタイの召命」1600年 この絵が『マタイによる福音書』からの1つのお話を語っています。 イエスが収税所で働いていたマタイ(収税人だった)に声をかけました「Follow me - ついて来て」。 次は、マタイがお金を置いて仕事を辞めて椅子から立ち上がってイエスについて行きました・・というお話です。 絵を見ますとマタイが4人の男性とテーブルに座ってお金を数えています。 その瞬間にイエスと聖ペトロが部屋に入ってマタイを指さしています。 光がイエスを見ている男性たちの顔に当たっています。 『聖パウロの回心』 パウロ(この時はまだサウル)はキリスト教に反対でした。彼が、キリスト教信者を捕まえて罰を与える為にダマスコという街に行きました。町に近づいた時、迫害する者から熱心な信仰者へ変わりました。パウロの回心と言われる出来事です。 強い光と「サウル、サウル、なぜ、わたしを迫害するのか」という声をサウルが聞きました。 光で彼は3日間に目が見えなくなりました。目は後に見えるようになるのですが、「目から鱗が落ちる」という言葉は、パウロの回心のできごとから生まれたとされます。この後パウロはキリスト教を広めるために大きな働きをしました。人生の最後に聖パウロが皇帝ネロのときにローマで斬首刑に処されて殉教して亡くなりました。 カラヴァッジョの絵を見る前にルネサンスの画家ガロファロが1545年に描いた作品を見ましょう。 同じ聖パウロの回心の絵画です。バロックのスタイルの色々の違いを見えますか? The Conversion of Saint Paul - Benvenuto Tisi ( Il Garofalo) 1545 カラヴァッジョ『聖パウロの回心』(1601年頃)The Conversion of Saint Paul (Caravaggio) ピエトロ・ダ・コルトーナ (Pietro da Cortona、1596年 - 1669年) カラヴァッジョはバロックの初期を代表する画家でした。 その後に「High Baroque」・・日本語で言いますと「盛期バロック」の時期があります。 この時に芸術は初期より豊かで・・表現は前より更に強いです。もっと立派になっています。 盛期バロックを代表する画家・建築家はピエトロ・ダ・コルトーナです。 彼は特にバルベリーニ宮殿天井画は有名です。 ジャン・ロレンツォ・ベル二ーニ (Gian Lorenzo Bernini、 1598年 - 1680年) 盛期バロックを代表する彫刻家・建築家はジャン・ロレンツォ・ベル二ーニです。 聖テレジアの法悦 Ecstasy of Saint Teresa, 1651年 (サン・ピエトロ大聖堂の天蓋、バチカン市国) この素晴らしい彫刻は修道女テレジアと槍を持つ天使を表現しています。 これはカルメル会修道女で改革者の聖女テレジアの自伝『イエズスの聖テレジア自叙伝』(1515年 - 1582年)に書かれているエピソードを再現したものです。この書物ではテレジアが天使と出会ったという神秘体験の様子は次のように記されている。 スペイン ディエゴ・ベラスケス (Diego Rodríguez de Silva y Velázquez、1599年 - 1660年) 次は、スペインのバロック美術の二人の画家の作品を見てみましょう。 スペインバロックを代表する画家はディエゴ・ベラスケスです。 絵画『ラス・メニーナス』(女官たち)は一番よく知られている彼の名作です。 バロックの最も素晴らしい作品と言われています。 ディエゴ・ベラスケス Las Meninas 1656年 (女官たち、The Ladies in Waiting) この絵画を説明するのは少し難しいです・・・なぜなら色々の解釈があるからです。 表面的な解説(それぞれの人物や歴史の紹介)から深い哲学的な解釈まで・・様々な解釈や意見があります。 ベラスケスが後ろの鏡に写っている王と王妃と今準備している王女の絵を描いています。 王と王妃はこんな小さく描かれているのはびっくりですね。 そして、私たち観賞者は王と王妃の場所にいます。つまり庶民が貴族と同じ立場になっています。 ベラスケスとマルガリータ王女が私たちを見ているから・・観賞者が作品と一体化しています。 色々を考えさせてくれる作品で多くの人の心をつかんでいる絵です。 うっとりと人の心をとらえるような魅力的な絵です! 構成は複雑で謎が多い作品です。疑問を起こして・・現実と想像や観賞者と絵の登場人物の間にぼんやりする作品です。 『ラス・メニーナス』の舞台はフェリペ4世のマドリード宮殿の大きな一室です。 ラヴェルは1899年に『亡き王女のためのパヴァーヌ』を作曲しました。 彼はベラスケスの絵『ラス・メニーナス』からインスピレーションを受けてその曲を作曲しました。 ラヴェルによると、この題名は「亡くなった王女の葬送の哀歌」ではなく 「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったようなパヴァーヌ」だそうです。 音楽のCDの表紙にもよく使われる絵画です。 フランシスコ・デ・スルバラン (Francisco de Zurbarán、 1598年 - 1664年) スペインバロックを代表する画家はもう一人がいます。それは、スルバランです。 スルバランの多くの作品はカトリック改革のテーマを持ちます。カトリック改革のことを前の記事に話しましたね。 彼は作品の中に宗教的なテーマや人物(修道士、尼さん、殉教者など)を描きました。 イタリアのバロックと比較すると人物の数が少ない絵画です。 そして、生き生きした感じではなく・・止まっているような感じがします。 激しい感情表現も少ないです。 構成はもっとシンプルでさっぱりしていますが・・不思議な強いインパクトと緊張感がある絵画です。 フランシスコ・デ・スルバラン 「聖ウーゴと食卓の奇跡」 スルバランの多くの作品をここで見られます:ギャラリー 次回は北ヨーロッパのベルギーとオランダのバロック美術を見てましょう。