今日からバロックの時代を見てみましょう。 しかし、バロック音楽を勉強する前にバロック美術とその時代の背景を見てみたいと思います。 簿ロック美術を少し知ればバロック音楽がもっと分かりやすくなります。 時代の背景 バロック時代を理解するにはいくつかの大事なポイントがあります: 1.カトリック改革・対抗宗教改革 カトリック改革のことをルネサンスの記事にも話しましたね。(リンク:音楽史11 ルネサンス後期-宗教音楽) カトリックとプロテスタントが対立して大きなケンカになりました。多くのカトリックの信者がカトリック教から離れてプロテスタントになりました。カトリック教会が信者を増やすために色々考えました。 16世紀のトリエント公会議(写真)ではカトリック教会がプロテスタントと戦うすることに決めました。これは反宗教改革やカトリック改革と言います。 会議の中で決めた一つのことはカトリック教をもっとアピールして魅力的に見せることです。例えば、綺麗な美術を教会の中に飾る、ミサにもっと美しくて分かりやすい伴奏の音楽を付ければカトリック教がもっと魅力的に感じます。芸術作品がよりもっと劇的(ドラマチック)に作れば多くの人が教会に来ます。作品の中に人間の感情をもっと表現すればキリスト教や聖書が多くの人にもっと分かりやすくると思われました。美術はカトリック教の「宣伝」になりました。 カトリック改革は特に南ヨーロッパ(イタリアやスペインなど)に集中していました。 2.絶対王政 バロック時代には国王が絶対的な権力を握る時代になりました。 中世のお城を見ると頑丈な建物ですが中は割とシンプルです。一方バロックの宮殿を見ますと裕福なリッチな場所です。立派な建物や大きな庭園や多くの噴水やたくさんの美術など、バロックの貴族はとても豪華な暮らしをしていました。 王様と貴族の娯楽のために毎日にオペラやバレエがありました。 ギリシャ神話のテーマを持つオペラが特に好まれました。 宮殿のバレエやダンスのお陰でバロック時代に多くの舞曲や組曲が生まれました。 この時代には貴族と庶民の格差はとても大きくなりました。バロック時代の後、フランス革命によって民主主義になるまでヨーロッパの貴族は大きな権力を持っていました。 絶対王政の例はフランスのルイ14世とヴェルサイユ宮殿です。(写真) 他にイギリスのイングランドのテューダー朝も有名です。 3.重商主義、貿易、科学と発明 多くの科学者の発明でヨーロッパの人が世界中に旅に行けるようになりました。植民地化や貿易や医学と産業の進歩のお陰でヨーロッパがとても裕福になりました。 神様に全てを任せる中世の人の考え方と違って、バロック時代の人が自分たちの力で環境や体や病気をコントロール出来ることを信じました。 人がバロック時代に初めて色んな境も超えました: ★ 細かい微生物を顕微鏡で見えるようになること(オランダ)・・ ★ 目で見えない重力の科学(イギリス)・・ ★ 世界を渡って船で旅すること(オランダ)・・ ★ 望遠鏡で宇宙を見ることが出来て(オランダ)・・ イタリアやイギリスやオランダに科学者から多くの発明や発見がありました。これによって宗教より科学の方を信じるような動きが始まりました。 人間が世界・環境をコントロール出来るという考え方が芸術の作品にもよく表れます。 バロック時代の作品は一つの「世界」だと思ってください。作品は一つのドラマやストーリーを表しています。 芸術家が人間の感情や好奇心のことを作品に表現しています。 バロック美術の3の特徴 バロック美術の特徴が3つあります。 Emotion(感情), Movement(躍動感), Drama(劇的) 1. Emotion(感情) 明暗法(めいあんほう) 絵画に感情と劇的な雰囲気を出すためにバロックの画家が使う技術は明暗法です。 絵の中に光と影の強いコントラスト(明暗の対比)のスタイルはとてもバロックらしいです。 インパクトがある強い印象の絵になります。音楽のForteとPianoだと考えてください。 明暗法を2つのスタイルに分けられます: ★ キアロスクーロ(Chiaroscuro) キアロスクーロ(Chiaroscuro)とはイタリア語で「明-暗」という意味です。明暗のコントラスト(対比)を指す言葉です。 豊かで深い色彩と強いコントラストですが、裏や背景がまだ見える(真っ黒ではない)から絵に立体感があります。 ★ テネブリズム(Tenebrism) テネブリズムは、光と闇の強烈なコントラストを使った絵画のスタイルです。 語源はイタリア語のテネブローソ tenebroso (闇) で、暗い、 不気味、神秘的など 劇的照明のようなことです。 キアロスクーロより背景は黒くて、暗闇から人物が浮かび上がったような画面でキアロスクーロよりもう少し平面的です。 ★ ルネサンスとの比較 バロックの劇的な感情の表現はルネサンスの穏やかな美術と比較すると分かりやすいです: 2. Movement(躍動感) もう一つの特徴のは動きやエネルギーを表すことです。(彫刻、絵画、音楽) 作品があるシーンやストーリーの一瞬を表しています。映画の中の大事なシーンやアクションの瞬間 に一時停止ボタンを押したような感じです。激しい動きが止まっているようです。 以下の2つの同じテーマの彫刻を見ましょう。両方の作品が聖書のダビデを表しています。 左の作品はルネサンスの芸術家ミケランジェロのダビデ像 。右の作品はバロック時代の芸術家ベルニーニのダビデ像です。 ここもルネサンスの作品の穏やかなイメージは激しいバロックの作品と違いますね。 もちろんにルネサンスの作品にも動きがありますが、人物はもう少し硬いや不自然なポーズを取っています。 更に人物の顔の表情や感情表現も違います。 作品の一瞬の感情や情熱の表現に圧倒されたり感激します。 バロックの作品・・動きを感じます: 逆に、ルネサンスの作品に「動き」をあんまり感じません: 3. Drama(劇的) バロック美術のもう一つの特徴は作品を通して物語を伝えることです。 物語の多くのテーマはギリシア神話や聖書からのお話です。 中世やルネサンスの作品に同じテーマがあったが、ルネサンスの芸術家が主人公の姿を見せることだけに集中しています。 上のルネサンスの写真をもう一度見てください。 バロック美術を楽しむためには聖書やギリシャ神話を少し知るといいです。面白い話が多いですので楽しいです。 レンブラント 「ベルシャザルの饗宴」 ウィキペディアから:『旧約聖書』「ダニエル書」5章によると、バビロニアの王ネブカドネザル2世はエルサレムの神殿を略奪し、黄金の杯などの神聖な遺物を盗み出した。その息子ベルシャザルが酒宴を盛大に催した際に、父王がユダヤ人から略奪した杯を使用したところ、神の手が現れてベルシャザルの治世が崩壊する予言の碑文を壁に書いた。 最後に バロック音楽やバッハの音楽をピアノで弾きますと・・ 「美しく弾いてはいけない」や「「バッハを弾くと心を込めて弾いてはいけない」とよく聞きますが バロック美術を見ますと印象が少し変わりますね。この時代はとてもロマンティックな美術です。 感情表現はとても大事な時代です。